多文化交流のなかのフィリピンのイスラーム

川島緑の研究紹介

main visual main visual

ニュース

日本語版ホームページを開設しました。フィリピン、および、東南アジアのイスラームとムスリムを中心とする私の和文研究成果を紹介します
(英文研究成果はこちら)。

新刊紹介

FIELDPLUS

『FIELDPLUS』(フィールドプラス)28号、2022年7月、2-11頁

<巻頭特集>現地語写本にみる東南アジアのイスラーム化
菅原由美(責任編集)
「写本から見るスマトラとジャワのイスラーム化」
菅原由美
「パタニのイスラーム化 ―宮廷の知識から民に広がるイスラーム実践教育」
黒田景子
「ミンダナオの写本からみるイスラーム化」
川島緑
「チャムのイスラーム受容とは ―バニの写本を通して考える」
吉本康子

http://www.aa.tufs.ac.jp/ja/publications/field-plus

英文著作の紹介

英文著作の紹介

『ミンダナオのイスラーム学者の書斎:フィリピン、マラウィ市アッサディーク図書室所蔵シェイク・ムハンマド・サイド・ビン・イマム・サ・バヤン・コレクションに関する解題付目録と論考』(Occasional Papers No. 27)

オマン・ファトゥフラフマン、川島緑、ラビ・サリップ・リワルン編、左記編者+アナベル・T・ギャロップ、エルファン・ヌルタワブ著。
東京:上智大学アジア文化研究所、2019年、xxiv, 462頁。(©IAAMES, Sophia University)

著者所属先

※所属・職名等は刊行当時のものです。

オマン・ファトゥフラフマン Oman Fathurahman
シャリフ・ヒダヤトゥッラー国立イスラーム大学(UIN)教授(インドネシア、ジャカルタ)
川島緑 Kawashima Midori
上智大学名誉教授(日本、東京)
ラビ・サリップ・リワルン Labi Sarip Riwarung
ミンダナオ国立大学マミトゥア・サベール研究センター土着知識研究部長(フィリピン、マラウィ市)
アナベル・T ・ギャロップ Annabel Teh Gallop
英国図書館、東南アジア部門長(イギリス、ロンドン)
エルファン・ヌルタワブ Ervan Nurtawab
メトロ国立イスラーム学院(IAIN)講師(インドネシア、ランプン)

英文書誌情報

The Library of an Islamic Scholar of Mindanao: The Collection of Sheik Muhammad Said bin Imam sa Bayang at the Al‒Imam As‒Saddiq (A.S.) Library, Marawi City, Philippines: An Annotated Catalogue with Essays.

Edited by Oman Fathurahman, Kawashima Midori, and Labi Sarip Riwarung. Other authors: Annabel Teh Gallop & Ervan Nurtawab. Tokyo: Institute of Asian, African, and Middle Eastern Studies of Sophia University. 2019. (Occasional Papers, No. 27). xxiv, 462p. (©IAAMES, Sophia University)

内容紹介

ある社会で読まれ、伝えられてきた書物は、人々が何に関心を持ち、どのような知識を蓄え、創り出してきたかを物語る貴重な資料です。フィリピン史研究では、スペイン支配下フィリピン社会における書物の生産・流通や、それらが知識人に与えた影響に関する研究が行われ、19世紀末のフィリピン民族主義運動指導者ホセ・リサールの生家の書斎に置かれていた書物や、それらが若き日のリサールに与えた影響も検討されてきました。

これに対し、同時期のフィリピン南部、ミンダナオ島やスールー諸島のムスリム(イスラーム教徒)の知識人がどのような書物を読み、何に関心を持っていたかに関する研究はほとんどありません。そのため、20世紀半ば以前のフィリピンのムスリムの知的活動はほとんど知られておらず、東南アジアの他の地域におけるこの分野の研究に比べて大きく後れをとっています。その一因は、手書き写本を中心とするこの地域の古い書物が体系的に保存、集成されておらず、利用が難しいことですが、その背景には研究者の側の関心不足という問題があります。

これらの問題を克服するためには、まず、現地で保存されてきた書物を探し、目録を作成して広く利用に供する必要があります。さらに重要なのは、これらの書物を様々な観点から詳細に検討し、東南アジアの他の地域や南アジア、中東の書物との比較を通じて新たな価値を見つけ出し、その結果を広く多くの人と共有することです。

このような必要性にこたえるため、私は2007年以来、フィリピン内外の研究者の協力を得て、フィリピン、南ラナオ州バヤン町の宗教指導者、シェイク・ムハンマド・サイド・ビン・イマム・サ・バヤン(1902年頃生、1974年没)のイスラーム書コレクションの調査研究を行ってきました。本書は長年にわたるこの研究の成果であり、同コレクションに所蔵されているイスラーム写本の内容を詳しく紹介するともに、これらの資料を利用した論考や報告を収録しています。フィリピンのイスラーム研究の新たな分野を切り開く先駆的研究として、本書が多くの人に利用され、この分野の研究の発展に貢献することを願っています。

目次

序文: 川島 緑
メッセージ: ウスマン・イマム・シーク・アル・アマン

第1部 序論と背景

1.序論
川島 緑、オマン・ファトゥフラフマン
2.シェイク・ムハンマド・サイド・コレクションの歴史
川島 緑

第2部 論考

3.ヒジャーズとミンダナオをつなぐ:「サイイドナー」トゥアン・ムハンマド・サイドの旅
川島 緑
4.シェイク・ムハンマド・サイド・コレクションのマレー語タフスィール(クルアーン解釈書)
エルファン・ヌルタワブ
5.写本の作成と保存にマラナオ人が利用した現地の材料
ラビ・サリップ・リワルン
6.シェイク・ムハンマド・サイド・コレクション所蔵写本の料紙と表紙
川島 緑
7.イスラーム写本美術にみる文化交流:ミンダナオの学者の書斎から
アナベル・T・ギャロップ

第3部 目録

シェイク・ムハンマド・サイド・コレクション所蔵写本解題付目録
ファトゥフラフマン、川島、ヌルタワブ、リワルン

付録A – K
人名索引、事項索引

本文(英語)はこちら

プロフィール

川島 緑

カトリックが人口の大半を占めるフィリピンには、南部のミンダナオ島西部とスルー諸島を中心として、人口の約6%を占めるムスリム(イスラーム教徒)が住んでいます。

私は、このフィリピン・ムスリムの政治・社会・宗教運動とそれを支える思想や、東南アジアと中東をつなぐイスラーム・ネットワークについて研究しています。これと関連して、その基礎資料となるマラナオ語、マギンダナオ語、タウスグ語などの南部フィリピン諸語や、マレー語、アラビア語などの資料の収集・集成・研究に、フィリピン内外の研究者と連携して取り組んでいます。

これらの研究を通じて、これまで欧文資料に大きく依拠して描かれてきた南部フィリピン・イスラーム地域の歴史を、より多元的に、動態的にとらえなおすことを目指しています。

SIAS-42-Thai
(クリックすると、拡大表示されます)

略歴

1975年 東京都立大学人文学部卒業
1976-1977年 英国エジンバラ大学大学院社会人類学専攻研究生(国際ロータリー財団奨学生)
1978-1981年 民間企業勤務
1981-1982年 国連開発計画(UNDP)マニラ事務所ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー
1985年 東京大学大学院総合文化研究科国際関係論専攻修士課程修了
1993年 東京大学大学院総合文化研究科国際関係論専攻博士課程単位修得満期退学
1994-1997年 静岡県立大学大学院国際関係学研究科助手
1997-2004年 上智大学外国語学部助教授
2004-2014年 上智大学外国語学部教授
2014-2019年 上智大学総合グローバル学部教授
2019年-現在 上智大学名誉教授、上智大学アジア文化研究所名誉所員

pagetop