川島緑の研究紹介
日本語版ホームページを開設しました。フィリピン、および、東南アジアのイスラームとムスリムを中心とする私の和文研究成果を紹介します(英文研究成果はこちら)。
『東南アジアのイスラームを知るための64章』久志本裕子・野中葉(編著)、明石書店、2023年
『FIELDPLUS』(フィールドプラス)28号、2022年7月、2-11頁
『ミンダナオのイスラーム学者の書斎:フィリピン、マラウィ市アッサディーク図書室所蔵シェイク・ムハンマド・サイド・ビン・イマム・サ・バヤン・コレクションに関する解題付目録と論考』(Occasional Papers No. 27)
オマン・ファトゥフラフマン、川島緑、ラビ・サリップ・リワルン編、左記編者+アナベル・T・ギャロップ、エルファン・ヌルタワブ著。
東京:上智大学アジア文化研究所、2019年、xxiv, 462頁。(©IAAMES, Sophia University)
著者所属先
※所属・職名等は刊行当時のものです。
英文書誌情報
内容紹介
ある社会で読まれ、伝えられてきた書物は、人々が何に関心を持ち、どのような知識を蓄え、創り出してきたかを物語る貴重な資料です。フィリピン史研究では、スペイン支配下フィリピン社会における書物の生産・流通や、それらが知識人に与えた影響に関する研究が行われ、19世紀末のフィリピン民族主義運動指導者ホセ・リサールの生家の書斎に置かれていた書物や、それらが若き日のリサールに与えた影響も検討されてきました。
これに対し、同時期のフィリピン南部、ミンダナオ島やスールー諸島のムスリム(イスラーム教徒)の知識人がどのような書物を読み、何に関心を持っていたかに関する研究はほとんどありません。そのため、20世紀半ば以前のフィリピンのムスリムの知的活動はほとんど知られておらず、東南アジアの他の地域におけるこの分野の研究に比べて大きく後れをとっています。その一因は、手書き写本を中心とするこの地域の古い書物が体系的に保存、集成されておらず、利用が難しいことですが、その背景には研究者の側の関心不足という問題があります。
これらの問題を克服するためには、まず、現地で保存されてきた書物を探し、目録を作成して広く利用に供する必要があります。さらに重要なのは、これらの書物を様々な観点から詳細に検討し、東南アジアの他の地域や南アジア、中東の書物との比較を通じて新たな価値を見つけ出し、その結果を広く多くの人と共有することです。
このような必要性にこたえるため、私は2007年以来、フィリピン内外の研究者の協力を得て、フィリピン、南ラナオ州バヤン町の宗教指導者、シェイク・ムハンマド・サイド・ビン・イマム・サ・バヤン(1902年頃生、1974年没)のイスラーム書コレクションの調査研究を行ってきました。本書は長年にわたるこの研究の成果であり、同コレクションに所蔵されているイスラーム写本の内容を詳しく紹介するともに、これらの資料を利用した論考や報告を収録しています。フィリピンのイスラーム研究の新たな分野を切り開く先駆的研究として、本書が多くの人に利用され、この分野の研究の発展に貢献することを願っています。
目次
序文: 川島 緑
メッセージ: ウスマン・イマム・シーク・アル・アマン
付録A – K
人名索引、事項索引
本文(英語)はこちら
カトリックが人口の大半を占めるフィリピンには、南部のミンダナオ島西部とスルー諸島を中心として、人口の約6%を占めるムスリム(イスラーム教徒)が住んでいます。
私は、このフィリピン・ムスリムの政治・社会・宗教運動とそれを支える思想や、東南アジアと中東をつなぐイスラーム・ネットワークについて研究しています。これと関連して、その基礎資料となるマラナオ語、マギンダナオ語、タウスグ語などの南部フィリピン諸語や、マレー語、アラビア語などの資料の収集・集成・研究に、フィリピン内外の研究者と連携して取り組んでいます。
これらの研究を通じて、これまで欧文資料に大きく依拠して描かれてきた南部フィリピン・イスラーム地域の歴史を、より多元的に、動態的にとらえなおすことを目指しています。
略歴
1975年 | 東京都立大学人文学部卒業 |
---|---|
1976-1977年 | 英国エジンバラ大学大学院社会人類学専攻研究生(国際ロータリー財団奨学生) |
1978-1981年 | 民間企業勤務 |
1981-1982年 | 国連開発計画(UNDP)マニラ事務所ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー |
1985年 | 東京大学大学院総合文化研究科国際関係論専攻修士課程修了 |
1993年 | 東京大学大学院総合文化研究科国際関係論専攻博士課程単位修得満期退学 |
1994-1997年 | 静岡県立大学大学院国際関係学研究科助手 |
1997-2004年 | 上智大学外国語学部助教授 |
2004-2014年 | 上智大学外国語学部教授 |
2014-2019年 | 上智大学総合グローバル学部教授 |
2019年-現在 | 上智大学名誉教授、上智大学アジア文化研究所名誉所員、上智大学イスラーム地域研究所名誉所員 |